金を貸してくれと言いに来た人々の思い出

僕は他人から銭を借りないし、他人に銭を貸さないことにしている。

借りた銭は返せなくなる。貸した銭は戻ってこなくなる。
一度だけ、リーマンショックで信用取引の追証責めになり良い会社の株を買ってきたので追証に耐え抜けば最後に助かると妄想し投資仲間(いわば僕の弟子みたいな人)から300万円借りたことがある。
これはちゃんと返しました。そのとき以外は銭を他人から借りたことがない。

金を借りに来た人はたくさんいらっしゃいます。
商売に行き詰まった人が藁にもすがる思いで金を貸してくれとやってくるケースが多いです。
こういう人に貸しても絶対に金は戻ってこない。
商売で行き詰まった人は、早く倒産してしまって負債を合法的にチャラにして、ゼロからまた夫妻で働いたほうがよい。

倒産前に他人から銭を掻き集めて金融機関に持っていっても焼け石に水で、他人に迷惑をかけるばかりです。早く倒産することが正解です。

やまさんは一度会っただけのテスタさんに借金を申し込んだそうですが僕の場合、一度も会ったことがない人が我が家にやってきて「草笛さん、お金を貸してください!お願いします!」と頼まれたことがある。

ほとんどは多少の付き合いがあった人たちが借金を頼みにくるのだがまったく面識のない人がやってきて金を貸してくれと言われて驚いた。

「あなたとどこかでお会いしたことが、過去にありましたかね?
 記憶にないけど、何か僕がお世話になったことがありましたか?」

と相手の方に念のために聞いてみたら

「いや、今日が草笛さんとは初対面です。あなたのために何かやったこともありません。キッパリ!」

という答えでした。

その人は借金申し込み理由を小一時間語った。

「農業を近代化しようとして大量の農機具を農協ローンで 買いそろえたが、農業は儲からなくてローンが支払えなくなった。このままだと、ローンの担保として差し出している先祖伝来の田畑が没収されてしまう。それでは先祖様に申し訳がないので善の循環をやっている草笛さんに救済していただこうと思ってやってきました!」

なんで見知らぬ他人の、農民の先祖伝来の農地を守るために僕が金を貸さねばならんのか説明を聞いても意味が分かりませんでした。

人は借金に追いかけられて精神的に追い詰められると奇想天外な行動に出るものなのでしょう。

「俺は赤の他人のあなたにお金を貸すほど、お人好しではないゼヨ!」

と心の中で叫びつつも、応対は丁寧にしました。
こういう追い詰められている人を冷たくあしらうと逆恨みされて恐いことになるかもしれないのです。

「あなたのおっしゃる通りです。
 農家の皆様が報われる社会にしないといけませんね~~
 あなたの境遇に心より同情申し上げます。
 借金の件にはお応えしかねますが、めげずに頑張ってくださいね。
 隣に寿司屋があります。帰りに寿司を食って一杯飲んで元気をつけてください」

僕は金封に5千円札を一枚入れてお渡しして丁重にお帰りいただきました。

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