痴漢冤罪の恐怖

新聞やニュースでやたらと電車内での痴漢が報道されます。昨日2月28日にも宇都宮線の大宮あたりを走っている電車内で二人の公務員が痴漢容疑で逮捕されています。いづれも分別ざかりの34才と58才。捕まえたのは18才と20才の女性です。上野発9時48分ですから、午後10時過ぎの時間でしょう。大抵の人は、公務員でいい年してとんでもない奴だと思うでしょう。

実際とんでもない人かもしれない。色気の道には歳も立場も身分もないかもしれない。常日頃痴漢行為を繰り返していて、常習犯として捕まったかもしれない。
しかし、ここでは、彼らがもし身に覚えのない罪に泣いていると仮定して推論します。あくまでも仮定の話で、被害者の女性を批判するものではありません。見知らぬ女性に対する痴漢行為は絶対に許されることではないからです。

ここからは、仮定の話しです。
たとえば58才の公務員の場合、退職金も目の前で、妻子もあるでしょう。孫もいるかもしれない。そういう方が、まだ10時という時間にあえて明るい電車内で痴漢行為をやるものでしょうか?
通勤時間として夜10時は決して遅い時間ではない。仕事帰りに居酒屋で一杯引っ掛けて、早めの帰宅と言っていいでしよう。あえて、冤罪であると仮定した場合、こういうシチュエーションが考えられます。

仕事を終え、一杯飲んで、電車にのり、宇都宮線はボックス型4人がけの座席なので、若い女性と同席になった。仕事の疲れと酒の心地よい酔い心地で思わずうとうとしてしまっていた。そこに、女性の叫び声。
「やめて下さい、痴漢として警察につきだしますよ!」
女性は58才公務員の手をしっかりつかんでいる。公務員のお父さんはなんのことか分からない。回りの乗客はぎょっとして見ている。
「俺がなにをしたというんだよ」
「あなたは酔って、私に触ったじゃないの!」
「俺は寝ていただけで、なんにもしていないよ」
「いいから、鉄道警察隊にいきましょう。そこで白黒をつけましょう」
「おお、いいよ。俺はなにもしてないから、どこでも行くよ」

鉄道警察隊の詰所では、お父さんがなにを抗弁しても通らない。訴えているのは、20才の清楚な感じの女子大学生。中年の男の言葉とうら若い女子大生の言葉では重みが違って男が圧倒的に不利な立場になる。
しかも、女性はしらふだが、中年の男は酒を飲んでいる。酒を飲んでいる者の証言はさらに不利になる。嵌める場合、女性は酒に酔っている男を狙うことも覚えておくといい。酔っ払っていることは致命的に不利な立場になるからだ。

男はそのまま、警察署に連れていかれて現行犯として逮捕されてしまう。相手の女性がやられたと言っている以上、男がやっていないことを証明するのは駱駝が針の穴を通る事より難しいことである。やっていないと言い張れば、自供するまで留置場に留め置かれる。

痴漢の場合、罰金刑であるから、やったと認めて略式起訴で罰金を払って事件をおさめることが多い。争ってもなかなか勝てないからだ。罰金は5万円ほどだから「交通違反程度の軽いことだよ」という刑事の「親切な」勧めで仕方なく不承不承認める人が多いようだ。しかし、略式といえども有罪は前科になるし、痴漢をしたということを認めた以上、相手の女性から民事上の慰謝料請求が行われることもあろう。痴漢の慰謝料は10万円以上が相場だと弁護士が言っていた。
                  
もし悪意の女性がいて、痴漢だ強制猥褻だと訴えられると、男はとんでもない危機に見舞われることになる。「かよわい女性が、ゆえもなく訴えるはずがない」と言う女性性善説に立っているので、警察は女性の言い分を信じてしまう。

痴漢のニュースで気づかれると思うが、女性に訴えられるのは、大学教授、学校の先生、公務員、一流会社の会社員などが多い。そういう職業にスケベが多いと即断してはいけない。そういう立場の人は、顔があり、訴えられると妥協することが多いのだ。

痴漢や猥褻罪は親告罪であり、相手の女性が取り下げれば犯罪を構成しない。起訴されて裁判になって、何年もかけて無罪になっても、元の地位や名声に傷がついてしまうから、泣く泣く示談に応じるケースが多いと推測できる。
ゆうべの電車内で痴漢で逮捕された人がふたりとも公務員であることも偶然の一致ではないかもしれない。酔って寝ていたのが、ホームレス風の人だったり、一見してその筋のこわもての男だったら、痴漢冤罪は起こりにくい。彼等は訴えられても失うものがないから、なにも恐がらず妥協しないからだ。

埼玉県では痴漢を県迷惑防止条例で取り締まっているが、1990年に81件だった摘発者が、2001年には583件に増えているという。痴漢以外の容疑もあるようだが、主に痴漢容疑である。実に10年で約7倍に痴漢は増えているのだ。埼玉県でさえこうなのだから、全国的に痴漢容疑で摘発されている人が急増していると推察できる。
警察は「泣き寝入りする女性が減ったからだ」と分析しているが、果たしてそうとばかり言えるだろうか?

痴漢行為は変態行為で、のぞき、下着泥棒、猥褻物陳列などとともに国民の一定の割合でそういう病的な人がいるとは思う。しかし、そういう犯罪者数は一定であり、犯罪の起こる確率も一定のはず。いかに泣き寝入りが減ったとはいえ、10年あまりで7倍に摘発者が増えるのは異常すぎはしないか?
そこに、冤罪に泣く数知れぬ男たちの存在があるのではないか?

埼玉県警は、このような痴漢摘発者の急増を背景に条例の改正をはかるとしている。現在の罰則は5万円以下の罰金か拘留、または科料となっているが、改正案では痴漢などの卑わい行為とダフ屋行為について6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金にするとしている。常習者については懲役6カ月以下 か罰金20万円以下を、懲役1年以下か罰金100万円以下にするという。

このような罰則規定の強化の前に、痴漢冤罪の究明を行うべきだと思う。罰則が重くなればなるほど、痴漢冤罪が増える恐れがある。懲役刑という実刑を伴うことになれば、痴漢として嵌められた男の立場は一層苦しくなり、和解金、示談金目当ての悪意の女性が登場してくる可能性が増すかもしれない。罰則の強化が、かえって犯罪(冤罪)の増加を促すこともありうるのである。
皆様も痴漢行為はしないように。また痴漢冤罪に嵌らないようにお気をつけください。


                                 痴漢冤罪の恐怖 完

コメント

タイトルとURLをコピーしました