孤独死した或る70歳代後期高齢者の死体の話

先日、高校時代の同級生が久しぶりに世間話の電話をしてきた。

いろいろ世間話をしたあとで

「世間のことはさておき、君自身はどういう暮らしなのかい?」

と聞くと、数か月に一度くらい昔の友人と飲みに出る程度。
ほとんど家に居て、庭の植物に水やりをして暮らしている、との返事でした。

「もっと社会と交わった方が、気持ちが引き締まって長生きできるゼヨ!」

とおせっかいにもアドバイスして隠岐増した。

「庭の植物に水をやる話など聞いても刺激がないわな~~
 もっと君の身の回りで起きた面白い話はないのかい?」

そう言って催促したら、友人はやっと興味深い話をしてくれた。

彼の義理の兄は70歳代の後期高齢者で生家で独居していたそうだ。
今年の半ばに民生委員の人から電話がかかってきて、最近姿が見えない、新聞受けに新聞がたまっている、家に鍵がかかっていて入れない。なにか様子が変だから見に来て欲しいと言われたそうだ。

義兄の家に駆け付けてみたら、鍵がかかっていて玄関からは入れない。
一戸建ての家なので他の場所から何とか家の中に入ってみた。
家の中は独居老人の住まいらしくゴミ屋敷風になっていたそうだ。
ペットボトルとコンビニ弁当の空箱が山となっていて家の中を歩くのも大変だったという。そういう状況なので靴を履いたまま家に上がったそうだ。
奥の居間からテレビの音が聞こえてきた。テレビがつけっぱなしだったのだ。

なんだ義兄は生きているのか・・・と半分ほっとして居間に行こうとするのだが
ゴミの山が邪魔して部屋に入れない。ゴミをかき分けて居間の
入口までたどりつくと、ペットボトルの空き瓶やゴミの合間に
人の頭のような物が見えた。人の頭なのか、単なるゴミなのか?
それを確認するために棒でつついてみた。手に返ってくる感触で
単なるゴミの塊なのではなく、人間の頭だと確信したそうだ。

頭のそばに近づいて顔を見てビックリ。目玉が腐れて眼窩 (がんか)が
落ちくぼんでいた。
葬式で死人の顔を見ることは人生で何度もあったが眼窩 (がんか)がぽっかり空いた死人の顔を見たのは初めてだった、と友人は述懐した。

「なかなか普通では見られない恐い光景を見たね。
 話を聞いているだけで僕の方が震え上がりそうだよ」

警察の検死によると死後数週間たって腐敗しミイラ化していたそうだ。

「山の中の一軒家だったのかい?」
「いや、住宅地で両側にも家があるんだよ」

「隣の人が孤独死したら、姿を見ないな、と両側の家の人が 気づきそうなものなのにね。コンビニ弁当とペットボトルの 飲み物を毎日買いに行っていたのなら、コンビニ店員が急に来なくなった客を不審に思うだろうにね」

と僕は一応言ってはみたが・・・
今の時代は個人主義時代で隣家の人の姿を何週間見なくてもそれがどうした?何か自分に関係あるか?ということなのだろう。

それにコンビニの店員もアルバイトで入れ替わりが激しいから常連のコンビニ弁当買いの客が急に来なくなったからと言って、コンビニの店員たちが客のことを気にしたりはしないわな~~

まっこと今の時代、人情紙風船。とくに独居老人は死んだとしても誰も気にかけないから、家で死んだら自分の身体が腐敗しミイラ化することも覚悟しておかないといけませんね。恐い話ですよ

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